ヌマケン ((沼田謙二朗のWEBサイト))
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とあるミュージシャンの話

きのうのライブもまた負けてしまったみたいだ
相変わらずCDなんて一枚も売れないしな
持ち出し分のノルマ支払ったから
お金もあんまりのこってないよ

君と呑めて今日はほんとうれしかった
ビールでもおごってやりたいけどちょっとできない
君もこれから大変だね
それじゃあそろそろ終電だから

ミュージシャンはひとしきり語り尽くしたあと
リュックサックを背負って駅のほうへと消えていった
俺は彼の背中を見ながらこう思った
ああなんてみじめな 人生なんだろうなって

そうだよ わかるかい ぼくたちは みんなおなじ バスにのってるよ
きみにも わかるかい 走ってゆく そのわけも知らないで 走る


そろそろ親もあれだしさあ もういいかげん いい歳だしさあ
結婚とかよくわかんねーけど 子供とかちょっと欲しい気もするみたいな
安定した収入ある仕事がほしい 幸せな家庭を夢に見て
てかこんな俺なんて終わってるし もう話なんてしてもしょうがねえし
ミュージシャンはつぶやく

で、なんで、なんでだっけ?
なんで、なんで、なんでだっけ? 
なんで俺歌ってるんだっけ?なんで俺音楽やってんだっけ?
いつも自分の ドキュメンタリーだ
再生 再生 録画 再生
再生 再生 再生 録画 再生
再生 再生 再生 再生 録画 再生
迷いも悩みも葛藤も みんなまとめてお届けします
それが俺の やり方だ ミュージシャンはつぶやく


誰もいないスタジオで ミュージシャンは歌っていた
すると その歌は スタジオから宇宙につながり
そうしてできた 一筋の か細い線の上を たくさんのタマシイたちが
流されるまま 河となって スタジオのなかに
ゴロゴロ転がり込んできました

少しだけ 暗闇は晴れて スタジオに 笑いが起こった
タマシイの歌は響き ミュージシャンの 耳に届いてゆくよ
それは一度も聞いたことがないくらいの 素敵な音楽でした
だからミュージシャンは魂に お尋ねしてみたのです
「ねえあなたはなんで歌を歌っているの?」
魂は答えました 「歌だけが 僕の生きていた証だからさ」

いま外の 夕焼けは明るみ ミュージシャンの 頬には涙
宇宙の河のひと粒は 世界中をかけてくよ
ああ スタジオから宇宙へ 道は通っていたのです

そうだよ わかるかい 僕たちはみんなおなじ バスに乗ってるよ
君にもわかるかい 走って行く そのわけもしらないで 走る
© numa-ken.net
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