いけないこと
いけないことを する
とっても なんて
いけないことを する
したいから する
泣けた
あなたの腕
震えているから
私より もっとずっと
震えているから
胸に おしつけて
口に出せなかった 言葉を
ずっと 一度も
口に出せなかった 言葉を
それから
くちづけた
あなたの口の中から
あなたの心の中へ
ほんの一瞬だけ
名前を呼んで
やっと震えが
とまったころに
いけないことを する
とっても なんて
いけないことを する
したいから する
愛のはじまり
今日
世界は終わる
いつだって
向こうっかわは
空白だから
今日
闇夜の中で耳にした
沈黙の歌を君にきかせよう
その歌は
空白を満たす
絵の具の役割を果たすものだ
愛というのは古代人が
一人の異性と関係しつづけるため
生み出した情緒である
それ以前には
存在しなかった情感を発生させるには
革命的な集中と努力が必要だったはずである
空白を満たすため
投げる言葉があるのも
そういう経路があるからである
今日
闇夜の向こうに愛をささやく古代人の姿が見えたなら
それは私たちが
古代人の住む
永遠(とわ)なる門を覗いたから
世界は終わる
その向こうでまた
新しい世界が
空白の真ん中
宇宙の産道を通って
誕生している
....
何だよ。文句あんのかよ。ここで踊っちゃいけねーってのかよ。ふざけんな。俺は踊ってお前は歩いてふざけんな。踊ってる奴より歩いてる奴の方が偉いのかよ。 そんな文句言える権利あんのかよ。言わないで頭の中で思ってるだけでも一緒だよ。口にしなくても出さなくても一緒だよ。お前が俺を許さねーっつーんなら俺 もお前を許さねーよ。どうして黙って通り過ぎねーんだよ。お前が黙んねーから俺も黙んねーんだよ。お前なんて歩いても歩かなくてもどうでもいいようなただ のボンクラじゃねーかよ。俺は踊らなくちゃ死んじまうようなキチガイなんだよ。俺とお前を一緒にすんなよ。お前は今日たまたまこの時間にここを通ったけど 俺は毎日ずっとここで踊ってんだよ。関係ねーよ。お前が大事だと思ってるもんなんて全部関係ねーよ。俺の大事なもんはお前の大事なもんじゃねーんだよ。俺 の大事なもんはお前がどうでもいいと思ってるもんなんだよ。俺の大事なもんはお前が歩いたり歩かなかったりするだけじゃ絶対にわからない何かなんだよ。俺 の大事なもんはここで毎日ずっと踊ってる俺にしかわかることのできない何かなんだよ。俺が自分の大事なもんを守って育てて求めていくことをどうして邪魔す るんだよ。どうして俺が悪いことをしてるって言うんだよ。どうしてお前は悪くなくて俺が悪いって事になっちまうんだよ。
どうして俺はお前を邪魔しないのにお前は俺を邪魔してそれが正しい道理にかなったことになっちまうんだよ。そんなに俺が邪魔ならお前はここを通らなければい いじゃねえか。そんなに俺が邪魔ならお前はここを通らずに帰っちまえばいいじゃねえか。ここを通らなくてもいいのにわざわざここを通って俺が邪魔だといっ てやめろと言うのはお前が実は悪魔だからだ。お前が他人の挫折を願う他人の不幸せを願う他人が絶望することを願うどうしようもない転倒した異常性欲者だか らだ。そんなお前に仲間なんて一人もいないしお前の周りにいるのはまたお前と同じようにお前の挫折を願いお前の不幸せを願いお前の絶望を願う人間以下のゴ ミ屑だけだ。本当に不潔なものはお前の歩行なんだ。お前がここまで歩いてきたってことが最も忌むべき最悪の非難されるべき最低の行為なんだよ。そんなおま えは俺に触れるな。そんなお前は俺と喋るな。本当は本当のことは俺だけが知ることができるんだ。俺だけがわかるんだ。それをお前もみんなもわからなくなっ ちゃってるんだ。俺だけが本当のずっと本当のいつまでも本当の最初から本当の最後まで本当のたった一つの本当の本当の人間なんだ。お前らは嘘八百だ。
想戒
前に前に
後ろに後ろに
振り向けばまた
自分の顔が
ある
誰かの顔と
とっかえっこできずに
ひとしきり悩むと
地面が歪む
すると
その奥底から
繋ぎとめるものの声がする
“その土地は知っている”
自分の顔と他人の顔が
区別できなくなったところに
新らしい能面を見つけるのだろうか
―――― それを「たましい」と
呼ぶような
決意を持ちつづけ
られるだろうか
見えない世界を感じることは
多分思い込みでしかない
本当にはできないことを
ヒントになるような“しるし”をかき集め
自ら、形をとりつくる
そういうものが「何か」でありうるのだろうか
希望を持ち続けるのは
自分の心の中に、なのかもしれない
たったそれだけのことのために
区別をなくし
嘘だとしか思えないことを
本当にするような
飛行機に石を投げる
フェンスをよじ登り
がれきの上に立つ
「たったそれだけのこと」が
地面を通じて
大気を通じて
知らず知らず奪ってしまったものの上に
無分別に届く時
その罰を引き受ける契約をして
私たちは行かなくちゃならないんだ
目を見開き
目をつぶり
それでも変わらないものの中で
祈ることを知るために
碑
ふと気づいたら まぼろしの
架空 の 世の中を生きていた
何か よくわからないが
形的にははっきりした 論理を
もっていますよ という人たち
という人たち に囲まれて
そのはっきりした 論理を
丁重に 学ばせていただいて
あぁ 賢くなった と
嘆息するのもつかの間
論理の通用しない
モンスターAくん
小学校時代の級友Aくんが
忘れ果てた思ひ出から登場した
「だからぁ ちがうっていってんだろぉ!?」
「そうじゃなくてぇ こうこう だよぉ!」
Aくんには 何を言っても通用しない
何を 説いても
―――― 忘れ果てた場から
登場した人物に
サヨナラを願うわけにはいかない
Aくんは、一切を顧みずに
動き回り、わめきちらす。
物を壊しても、人を傷つけるようなことがあっても
何も気にしない。
その、感覚は
強さなのか
弱さなのか
わからないが、とにかく
Aくんには話が通じない。
Aくんを 遠くしりぞけた場所に
僕らはビルを建てて暮らし住まう
その成り立ちは
強さなのか
弱さなのか
僕は
単純に言おうと思わない
ただ そのビルに入ろうとした
Aくんが
受付で
追い出されつづけ
僕らがそれを忘れ
完全に忘れきったとき
また Aくんは
現実の夢の場に出てくるだろう
それが
「俺を忘れるな」
という意志なのか
確認はとれないが
僕たちは
ただの ひとつの
凡庸なビルに住んでいる
そして その外には(外、というものがあるのだ)
異質なものが
それ自体として
必然に生き動いている
また 異質なビル というのもあるのだが
ビルとビル同士は
「自分たちは凡庸だ」
という共通項によって話し合うことができる
その中の
無数の凡庸な人たちは
凡庸なビルに守られながら
幸せになることが
もっとも価値あることであり
そのことを守るビルを
破壊しようとすることは
<人間>に逆らうことと同じことだと
言わなければならない
そう
言わなければ
成り立たないところで
僕たちは生きているに過ぎないのだから
しかし
ビルの解体を命ずるほど
自分は偉くないのだということと
Aくんの顔を忘れ
ふとやってきたときに
挨拶もせずに追い返すということは
自己矛盾の最たるものとして
思い知らなくちゃいけない
僕は
僕の罪は
そのことに痛みを
それを書くことに痛みを
覚え感じるかでないか
凡庸なビルに守られながら
幸せを志向する人物というのは
自分自身のことで
それ以上でもそれ以下でもない
忘れることが
全てを包むとき
思い出そうとする思い出は全て
僕のからだを一ミリも
動かさなくなるだろう
そんな時せめて
碑が
碑が ほしい
いけないことを する
とっても なんて
いけないことを する
したいから する
泣けた
あなたの腕
震えているから
私より もっとずっと
震えているから
胸に おしつけて
口に出せなかった 言葉を
ずっと 一度も
口に出せなかった 言葉を
それから
くちづけた
あなたの口の中から
あなたの心の中へ
ほんの一瞬だけ
名前を呼んで
やっと震えが
とまったころに
いけないことを する
とっても なんて
いけないことを する
したいから する
愛のはじまり
今日
世界は終わる
いつだって
向こうっかわは
空白だから
今日
闇夜の中で耳にした
沈黙の歌を君にきかせよう
その歌は
空白を満たす
絵の具の役割を果たすものだ
愛というのは古代人が
一人の異性と関係しつづけるため
生み出した情緒である
それ以前には
存在しなかった情感を発生させるには
革命的な集中と努力が必要だったはずである
空白を満たすため
投げる言葉があるのも
そういう経路があるからである
今日
闇夜の向こうに愛をささやく古代人の姿が見えたなら
それは私たちが
古代人の住む
永遠(とわ)なる門を覗いたから
世界は終わる
その向こうでまた
新しい世界が
空白の真ん中
宇宙の産道を通って
誕生している
....
何だよ。文句あんのかよ。ここで踊っちゃいけねーってのかよ。ふざけんな。俺は踊ってお前は歩いてふざけんな。踊ってる奴より歩いてる奴の方が偉いのかよ。 そんな文句言える権利あんのかよ。言わないで頭の中で思ってるだけでも一緒だよ。口にしなくても出さなくても一緒だよ。お前が俺を許さねーっつーんなら俺 もお前を許さねーよ。どうして黙って通り過ぎねーんだよ。お前が黙んねーから俺も黙んねーんだよ。お前なんて歩いても歩かなくてもどうでもいいようなただ のボンクラじゃねーかよ。俺は踊らなくちゃ死んじまうようなキチガイなんだよ。俺とお前を一緒にすんなよ。お前は今日たまたまこの時間にここを通ったけど 俺は毎日ずっとここで踊ってんだよ。関係ねーよ。お前が大事だと思ってるもんなんて全部関係ねーよ。俺の大事なもんはお前の大事なもんじゃねーんだよ。俺 の大事なもんはお前がどうでもいいと思ってるもんなんだよ。俺の大事なもんはお前が歩いたり歩かなかったりするだけじゃ絶対にわからない何かなんだよ。俺 の大事なもんはここで毎日ずっと踊ってる俺にしかわかることのできない何かなんだよ。俺が自分の大事なもんを守って育てて求めていくことをどうして邪魔す るんだよ。どうして俺が悪いことをしてるって言うんだよ。どうしてお前は悪くなくて俺が悪いって事になっちまうんだよ。
どうして俺はお前を邪魔しないのにお前は俺を邪魔してそれが正しい道理にかなったことになっちまうんだよ。そんなに俺が邪魔ならお前はここを通らなければい いじゃねえか。そんなに俺が邪魔ならお前はここを通らずに帰っちまえばいいじゃねえか。ここを通らなくてもいいのにわざわざここを通って俺が邪魔だといっ てやめろと言うのはお前が実は悪魔だからだ。お前が他人の挫折を願う他人の不幸せを願う他人が絶望することを願うどうしようもない転倒した異常性欲者だか らだ。そんなお前に仲間なんて一人もいないしお前の周りにいるのはまたお前と同じようにお前の挫折を願いお前の不幸せを願いお前の絶望を願う人間以下のゴ ミ屑だけだ。本当に不潔なものはお前の歩行なんだ。お前がここまで歩いてきたってことが最も忌むべき最悪の非難されるべき最低の行為なんだよ。そんなおま えは俺に触れるな。そんなお前は俺と喋るな。本当は本当のことは俺だけが知ることができるんだ。俺だけがわかるんだ。それをお前もみんなもわからなくなっ ちゃってるんだ。俺だけが本当のずっと本当のいつまでも本当の最初から本当の最後まで本当のたった一つの本当の本当の人間なんだ。お前らは嘘八百だ。
想戒
前に前に
後ろに後ろに
振り向けばまた
自分の顔が
ある
誰かの顔と
とっかえっこできずに
ひとしきり悩むと
地面が歪む
すると
その奥底から
繋ぎとめるものの声がする
“その土地は知っている”
自分の顔と他人の顔が
区別できなくなったところに
新らしい能面を見つけるのだろうか
―――― それを「たましい」と
呼ぶような
決意を持ちつづけ
られるだろうか
見えない世界を感じることは
多分思い込みでしかない
本当にはできないことを
ヒントになるような“しるし”をかき集め
自ら、形をとりつくる
そういうものが「何か」でありうるのだろうか
希望を持ち続けるのは
自分の心の中に、なのかもしれない
たったそれだけのことのために
区別をなくし
嘘だとしか思えないことを
本当にするような
飛行機に石を投げる
フェンスをよじ登り
がれきの上に立つ
「たったそれだけのこと」が
地面を通じて
大気を通じて
知らず知らず奪ってしまったものの上に
無分別に届く時
その罰を引き受ける契約をして
私たちは行かなくちゃならないんだ
目を見開き
目をつぶり
それでも変わらないものの中で
祈ることを知るために
碑
ふと気づいたら まぼろしの
架空 の 世の中を生きていた
何か よくわからないが
形的にははっきりした 論理を
もっていますよ という人たち
という人たち に囲まれて
そのはっきりした 論理を
丁重に 学ばせていただいて
あぁ 賢くなった と
嘆息するのもつかの間
論理の通用しない
モンスターAくん
小学校時代の級友Aくんが
忘れ果てた思ひ出から登場した
「だからぁ ちがうっていってんだろぉ!?」
「そうじゃなくてぇ こうこう だよぉ!」
Aくんには 何を言っても通用しない
何を 説いても
―――― 忘れ果てた場から
登場した人物に
サヨナラを願うわけにはいかない
Aくんは、一切を顧みずに
動き回り、わめきちらす。
物を壊しても、人を傷つけるようなことがあっても
何も気にしない。
その、感覚は
強さなのか
弱さなのか
わからないが、とにかく
Aくんには話が通じない。
Aくんを 遠くしりぞけた場所に
僕らはビルを建てて暮らし住まう
その成り立ちは
強さなのか
弱さなのか
僕は
単純に言おうと思わない
ただ そのビルに入ろうとした
Aくんが
受付で
追い出されつづけ
僕らがそれを忘れ
完全に忘れきったとき
また Aくんは
現実の夢の場に出てくるだろう
それが
「俺を忘れるな」
という意志なのか
確認はとれないが
僕たちは
ただの ひとつの
凡庸なビルに住んでいる
そして その外には(外、というものがあるのだ)
異質なものが
それ自体として
必然に生き動いている
また 異質なビル というのもあるのだが
ビルとビル同士は
「自分たちは凡庸だ」
という共通項によって話し合うことができる
その中の
無数の凡庸な人たちは
凡庸なビルに守られながら
幸せになることが
もっとも価値あることであり
そのことを守るビルを
破壊しようとすることは
<人間>に逆らうことと同じことだと
言わなければならない
そう
言わなければ
成り立たないところで
僕たちは生きているに過ぎないのだから
しかし
ビルの解体を命ずるほど
自分は偉くないのだということと
Aくんの顔を忘れ
ふとやってきたときに
挨拶もせずに追い返すということは
自己矛盾の最たるものとして
思い知らなくちゃいけない
僕は
僕の罪は
そのことに痛みを
それを書くことに痛みを
覚え感じるかでないか
凡庸なビルに守られながら
幸せを志向する人物というのは
自分自身のことで
それ以上でもそれ以下でもない
忘れることが
全てを包むとき
思い出そうとする思い出は全て
僕のからだを一ミリも
動かさなくなるだろう
そんな時せめて
碑が
碑が ほしい